2006年02月12日

川端康成「雪国」

営業に連れられてゲートを抜けると修羅場であった。プログラマの前途が暗くなった。入り口のそばで足が止まった。

向かい側の座席からSEが立って来て、部長席の前の受話器を取った。顧客の怒声が流れ込んだ。SEは手をいっぱいに広げて、遠くへ叫ぶように、
「仕様なんです、仕様なんです」

IDカードをさげてゆっくり入館して来た男はiPodで耳の穴をふさぎ、目に大きなクマを作っていた。

もうそんな状況かとプログラマは開発現場を眺めると、人が寝ていたらしい毛布が床に寒々と散らばっているだけで、彼の心はそこまで行かぬうちに闇に呑まれていた。

「お客さん、仕様です。議事録にもそうあります」
「ああ、話にならんじゃないか。部長はいるかい。また作り直しだよ」



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改めて読んでみて、雪国の序文って綺麗なぁと思いました
ttp://www1.odn.ne.jp/mushimaru/bakaessay/yukiguni2.htm

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posted by MW at 18:44| Comment(5) | TrackBack(2) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
静かな言葉で語られる文章なので、余計に
暗澹たる気持ちにさせられる仕上がりですね…。

この間、
「会議でそう決まったのは判っている!
 何しろウチの課長がその機能は要らないっていったんだから。
 でも、それでは困るんだ! こうこの機能にかえてくれ」
と納品日にもう攻撃されマシタですヨ…。

「お客さん、仕様です。議事録にもそうあります」
言ってみたい言葉のひとつです…。
Posted by 植月 at 2006年02月13日 09:55
>「お客さん、仕様です。議事録にもそうあります」

いいなぁ、この言葉の響き。
植月さんと同感です(笑)。

それにしても、この状況、目に浮かんできますね。
Posted by ishida at 2006年02月13日 10:14
どもっす
枕草子が好評だったみたいなので、川端康成に移行してみました。
「議事録にもそうあります」は若干実話っす。。。
あの日の出来事が心によみがえるようです。。。
Posted by MW at 2006年02月14日 00:22
あーそうですねー「やってくれなきゃ困るよ!」とばかりに高圧的に来るお客様(それでも様をつけてしまうあたりがうらめしいですが)には仕様書とか議事録持ち出しますねー。
そうでないときは「うーん...なんとかしますよ!」とか言っちゃうんですが。
まーどっちにしろやることになるんですけどね(泣)
Posted by きりはら at 2006年02月15日 15:01
どもー
議事録は僕らの守り神ですね。でも、守り神が負けた時は、僕らは敵の奴隷です。。。
Posted by MW at 2006年02月15日 23:31
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